Greg Fryer氏の新ギター
"Astronaut"製作プロジェクト
"Astronaut"製作プロジェクト
▲グレッグ・フライヤー氏の工房
2025年6月2日から6日まで、伊集院はGreg Fryer(グレッグ・フライヤー)氏の立ち上げた新たなプロジェクト打ち合わせのためオーストラリアを訪れました。
フライヤー氏といえば、オーストラリアのギタービルダーであり、ブライアン・メイ本人のレッド・スペシャルを修復したことで知られています。
また、ブライアンが所有するナチュラルカラーのレプリカモデル「GEORGE BURNS(ジョージ・バーンズ)」は彼が製作したレプリカモデルのうちの一本。
90年代後期から現代に至るまで変わらずステージで演奏され続けていることから、絶大な信頼を得ているギターであることは間違いありません。
そのほかにもアンプのモディファイやエフェクターの製作など、ブライアン本人はもちろんのこと、フォロワーにも影響を与え続けています。
Kz Guitar Worksとフライヤー氏はこれまで、オフィシャルシグネチャーモデル「BM Super」やVOX AC30のモディファイなど多方面で協力関係にあり、Fryer Guitarsのエフェクター「Mayday」や「Treble Booster Special」はKz Guitar Worksが日本国内での流通を担っていました。
そんなフライヤー氏と直接会うのは、約16年ぶり。
すでにFryer GuitarsのWebサイトには掲載されているとおり、彼は新たなギターである「Astronaut(アストロノート)」の製作プロジェクトをスタートさせました。
プロジェクトを進めるにあたり、これまでの関係性や実際の製品クオリティに信頼を寄せていただき、このたびKz Guitar Worksが製作を担うこととなりました。
Astronautの重要なスペックの一つとして検討されているのが、「New Guinea Rosewood(ニューギニア・ローズウッド)」。
フライヤー氏はかねてからこの木材に目をつけ、"GEORGE BURNS"に使用するなどトーンウッドとしての価値を見出しました。
中域が豊かで暖かくクリアなサウンド特性は、フライヤー氏が抱くサウンド・ビジョンに最も合致したのです。
この木材にしか出せない独自のサウンドは、Astronautプロジェクトにも欠かせない重要な要素と考えました。
同時にこの木材の選択には、"GEORGE BURNS"に一度立ち返ることが必要不可欠だと考えたのです。
▲Astronautのファースト・プロトタイプ
フライヤー氏は、Astronaut製作プロジェクトの構想を長年にわたって温めてきました。
1998年、ブライアン・メイのアラートン・ヒル・スタジオで最初に構想されたこのギターは、Red Specialの革新性をより広い層のプレイヤーに届けることを目指しています。
フライヤー氏は2005年、ボディ形状の設計に着手しました。
それはまるで、レッド・スペシャルをレオ・フェンダーのフィルターを通して再構築したかのようなデザインであり、フライヤー氏のギター製作における集大成とも言えるモデルです。
2005年から2007年頃、フライヤー氏はブライアンのために数多くの仕事を手がけており、自身の新しいギターにもブライアンとのつながりを感じさせる名称を探していました。
当時ブライアンは、天体物理学の博士号取得に向けて本格的に取り組んでいたこともあり、最初に思い浮かんだ名前は「アストロ・スター」でした。
その後、2012年にギターのデザイン作業を進めていた際、宇宙飛行士ニール・アームストロングの訃報を知り、フライヤー氏は「このギターには『Astronaut』という名前がふさわしい」と強く感じました。
また、彼が若い頃に乗っていたセーリングディンギーVJ(小型ヨット)の名前が「Astron」であったことも、この名前に対する個人的な思い入れを深めました。
ブライアンとの関連性、個人的な記憶、そして歴史的なタイミング――それらすべてが重なり、「Astronaut」という名前が誕生したのです。
▲材の異なる2本のファースト・プロトタイプ
AstronautはRed Specialのスピリットとユニークなトーンキャラクターを維持しながらも、現代のプレイヤーにとって扱いやすく、快適な演奏体験を提供します。
25.5インチのフェンダースケールを採用し、伊集院との共同開発によって独自の特徴が加えられたこのギターは、個性的でありながら多くのギタリストにとって親しみやすいモデルに仕上がりました。
ネックのプロファイルはヴィンテージのフェンダー・ストラトキャスターに近く、一般的なエレキギターに慣れたプレイヤーにとっては、手に取った瞬間から自然で心地よい感触が得られるでしょう。
現時点で予定されているスペックです。ファースト・プロトタイプの2本をもとに、フライヤー氏は現在も継続して検証を重ねています。
また、木材はニューギニア・ローズウッドとマホガニーから選択可能になる予定です。
完成版の詳細なスペックについては2025年12月ごろに発表を予定していますので、お楽しみにお待ちください。
【SPEC】2025年9月30日時点
Color : Natural
Body Top :New Guinea Rosewood / Big-Leaf Mahogany
Body Back : New Guinea Rosewood / Big-Leaf Mahogany
Neck : New Guinea Rosewood / Big-Leaf Mahogany, Vintage ST Style Grip
Finger Board : Madagascar Rosewood / Ebony, 12”R
Fret : Jescar FW45100
Nut : BLACK TUSQ
Pickguard:Acrylic Black Pickguard
Tuner : GOTOH SG301 MG-T
Bridge : The Cyber Shop Original BM Style Bridge & Tremolo
Controls : Volume x1, Tone w/Phase-SW(Push-Push) x1, 5-Way Lever SW x1, Mini-Toggle SW(Series-Parallel) x1
Pickups : KGW T-S Custom(N,M,B)
Option : Urethane High Gloss finish
付属品:セミハードケース、Kz Guitar Works保証書、スペックシート、調整工具
価格:未定(2025年12月ごろ発表予定)
ニューギニア・ローズウッドは、ニューギニア島(パプアニューギニア)原産のローズウッドの一種です。高級家具などにも使用される高級木材として扱われ、フライヤー氏の住むオーストラリアでは比較的ポピュラーな木材です。
木材としては、加工性に優れ、メイプルとマホガニーの中間ほどの絶妙な硬度を持っています。色は黄金色から濃い赤色までバリエーションに富んでおり、どの部分をギターに採用するかで大きく表情が変わります。
また、加工性にも優れており、磨くと美しい光沢が現れます。
音響特性は、中域が豊かで暖かくクリアなサウンド、音の立ち上がりが良く粒立ちが良いのが特徴です。
長年の構想を経て、ついに実現に向けて動き出したフライヤー氏のAstronautプロジェクト。
Kz Guitar WorksではすでにAstronautのプロトタイプを製作し、シドニーのフライヤー氏の工房で入念なチェックを行いました。
そして現在、チェックの結果を反映させた最終スペックの製作をスタートする段階となっており、25年9月をめどに完成する見込みです。
(2025年9月29日追記 入念なチェックのため、完成予定時期は11月ごろへ変更となりました。)
12月もしくは 26年1月をめどに一般販売の開始を目指しています。
Astronautには、フライヤー氏が温め続けた想いと実現に至るまでのストーリーがあります。
プロジェクトが進むごとに、皆さまへお伝えしながらこのギターに乗せた想いをお届けしていく予定ですので、ぜひ続報にご期待ください!